金急落、リーマン時と酷似 流動性確保へ学習効果
商品部 佐藤洋輔
2011/9/28 6:00
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金は年末には1トロイオンス2000ドル前後への上昇もありうるのではないか――。相場の急落で一時は相場の深い谷間をのぞき込んだ市場関係者から、わずか1日で強気論がもれ始めた。「欧州の債務危機など金の上昇を支えてきた環境は変わっていない」(日本ユニコムの菊川弘之調査部長)のがその理由だ。
1トロイオンス1800ドル台で推移していたニューヨークの金先物は26日までの3日間で300ドル近く急落し、一時1535ドルを付けた。しかし、27日の時間外取引では一時、安値に比べ100ドル以上反発するなど買い戻しの動きも出始めている。
市場では今回の下落は2008年秋のリーマン・ショックを経験した投資ファンドが、ろうばい売りを出し、コンピューター売買が下げ幅を拡大したとの見方が目立つ。
下落局面を振り返ると、値下がりの主因はギリシャ債務問題などを背景とした市場の緊張と危機回避に備える換金売りだった。ここ数カ月の金相場上昇では、株価が下がると金が買われる傾向があったが、9月中旬以降は徐々に換金売りが出るようになり、株価との相関も弱まって相場の方向感が定まらなくなった。米連邦準備理事会(FRB)による量的緩和第3弾(QE3)が見送られたことなどで市場の緊張が臨界点に達した先週末からの数日間、金の換金売りが加速した。
金価格の上昇が長く続いたため、株や債券で運用してきた投資ファンドが次々と金の先物市場に参入した。スタンダードバンクの池水雄一東京支店長は「投資家の裾野が広がった分、従来は予想できなかったような急激な下げとなった」と指摘する。
株式や原油など他の国際商品含めて「総売り」となった今回の金の急落について、市場ではリーマン・ショック時の急落との類似を指摘する声が多い。当時も手元流動性を確保しようと換金売りが広がった。今回の急落はいわばリーマン・ショックからの学習効果で、危機が起きる前に先回りして流動性を確保するための金売りだったといえる。
換金目的の売りが、値動きの大きさに着目して売買するプログラム取引の売りを誘ったもようだ。前週末の急落過程では「誰が売っているのがが見えない」との声が市場のあちこちからあがった。
リーマン・ショックで急落した金相場は2カ月後に反転。その後上昇を続け、今年8月にピークを迎えた。怒とうのような売りの余韻を残しながらも、「有事の金」は再び上昇のタイミングをうかがっている可能性がある。
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